陳氏太極拳協会双月会

★〜刀に掻かれた溝(樋)のお話〜

2026年2月8日
いよいよ九州でも太極刀の講習会がスタートしました。
陳沛山老師の講習会です。
いつものように一般講習会と指導者講習会の二本立てでした。
私は所用で参加できなかったのですが「双月会」の参加の皆さんからお話を伺う事が出来ました。
一般講習会に参加した会員は今回の講習会は中国刀の紹介のみと思っていたので太極刀を持参していませんでした。
ところが講習会のほとんどが刀の講習だったそうで驚いたものの
「他の教室の方々から刀をお借りして学ぶ事が出来ました。」
「剣と刀の持ち方の違いから丁寧に教えて頂きました。」
「いつもお世話されている背の高い女性の方から指導者講習会に参加しても良いと言われたけれど時間の都合でお断りしました。お心遣いがとても嬉しかった」
などなどお声を頂きました。

そんな中で会員から一つ聞き取れなかったと言う老師の言葉が話題になりました。
それは
「刀身に2本の線が入っていることに意味があるということだっだのですがそこがうまく聞き取れなませんでした。その意味をご存知ですか?」
と言うものでした。

この刀身の「溝」これは日本では「樋」(ひ)と言います。

ここからは私の知る日本刀の「樋」についてのお話になります。

刀身に樋を施すことを「掻く」(かく)あるいは「突く」(つく)と言い
ますが、実は日本ではこの「樋」の目的や意味は今ひとつはっきりとしていません。その理由は、樋の役割を記した史料が見つかっていないからです。
ただ考えられる事として
「刀身を軽くするため」とか「見栄えを良くするため」とか「風切り音を出やすくするため」とも言われています。

今回「うーしゃん」(「双月会」のイメージキャラクターで「X」で活動中)が「会員様が老師の言葉が聞き取れなかったとのこと。「樋」にはどういう意味があるのでせうか?」
という事をツイートしたところ

「血という話だったような。」
「刀に付いた血の表現で機能として想定されているかはわかりません。」
という返信を頂きました。

確かに「樋」の別名に「血流し」というものもあります。

ただ私個人的には日本刀においては「樋」が「血流し」の為に作られた。と言うのには少し疑問がありました。以前刀剣を製造(鍛造)する所に「御幣(ごへい)」と呼ばれる神具(神社のしめ縄などに吊るされた白い紙に竹の棒などが付いたもの)が飾られているのをみた事があるからです。
日本では日本刀に対して武器としての価値とは別に神聖なものとしての文化的価値があるように思います。

また、日本では現存する鎌倉時代の刀も多く如何に大切にされてきた(手入れされてきた)のかがわかるのです。

それほど大切にしてきた刀が、「樋」を通すことで手入れが大変になるのが容易に想像出来ます。(血の拭き残しがあると錆びる、曲がった時の直しが大変など…)

今回この話を聞いて
(もしかしたら中国と日本では刀に対する文化的価値に違いがあるのかもしれない)と思いました。

以前中国ドラマで戦士が敵に向かう様子(刀剣を斜め下に地面に擦り付けるように突進する)が日本では考えられない。と驚いた事があります。
この辺りも日本と中国の刀に対する文化的価値観の違いかもしれません。

日本で樋が掻かれ始めるのは鎌倉時代の中期。この頃は日宋貿易(にっそうぼうえき)が行われていた頃です。

もしかしたら中国で掻かれていた「樋」の文化が日宋貿易を通して日本に輸入されたのかもしれませんね。

沛山老師の「樋」についてのお話。
会員の方から
「ん〜。太極拳として非常に大事な意味がある 気の流れる道でみたいな話だったような…」
そんなお話も出ました。

日本では博物館関係者でさえ「樋」の意味するところははっきりとはわからないと言われます。

もしかしたら中国での「樋」の文化的意味は沛山老師の様な立場の方々には伝わっているのかもしれません。

またいつか講習会でその辺りの事をお話し頂けたら…。
と先楽しみにして今回の寄稿文は終わりといたします。

「双月会」は今年度も新会員募集中です。
太極拳を通して身体を元気にする事。文化や歴史を学ぶ事。皆んなが楽しく触れ合える事。
そんな「双月会」です。興味のある方は是非お越しください。
会員一同お待ちしております。

「双月会」竹之内