陳氏太極拳協会双月会

★〜太極拳と他の武術の中にある文化についての私考〜

2026年8月寄稿文

太極拳と他の武術の中にある文化についての私考

先日「双月会」の四正剣の練習で「覇王挙旗」が話にあがりました。
「覇王って?」
という疑問にその時の私は
「覇王」とは武力で国を治める王の事です。」
くらいのお話ししかできませんでした。
中国には「王」とは徳で国を治め、「覇」とは武力で国を治めることを指す、いわゆる王道・覇道の考えがあります。
又「覇王」と言えば「西楚覇王」こと「項羽」の事。と捉える人もおられるでしょう。
こんなふうに一つの武術を学ぶにあたって実はその国の文化や歴史背景を理解していなければわからない事はよくあります。
つまり太極拳の中には中国の文化がある。と捉える事が出来る訳です。
では文化とは何か。
文化とはそれぞれの地域 社会にあって、学習(練功)によって伝習されるものです。
ただ個人の文化理解がその人の生き方、経験によって深まるのと同様に文化そのものも時代の中で変遷をとげるものです。

この太極拳の「文化」というものを客観的に捉えようとするなら
まずその文化(太極拳)というフィールドの上に
★時代というX軸
★場所(地域)というY軸
更に
★個人というZ軸
の3つの軸から成ると考えています。

文化とは
「時代」という大きな流れの中で変化するものであるという事。
(太極拳は時代の中で少しずつ変化している。)

「場所(地域)」はその核となる場所(太極拳であれば陳家溝もしくは宗家のおられる場所)からの距離(近い程学びやすい環境にあるという事)

「個人」とはその人がその文化に対する情熱の度合(つまり「心」なので揺らぎ、揺り戻し、揺れがある)

という考えです。

太極拳を学び始めたばかりの頃は外形の形のみに囚われますが、少しずつ習熟していとく、自身の中に文化化していくのを感じます。

文化化(ぶんかか)とは、個人が生まれ育つ社会の価値観・信念・行動様式などといった文化を学び取り、自分の人格や行動の一部として身につけていく過程を指す概念です。

これを太極拳に落とし込むなら太極拳の練功を積む事によって人との関わり・信念といった人間形成を成す思想が身につくと考えられるでしょう。

さて自分の文化(太極拳)を文化化していくとつい自分の文化(太極拳)を中心に物事を判断してしまいがちになります。

自文化(太極拳)の中で「良し悪しの判断基準」にそれを用いるのはもちろん構いませんが、これを他の武道武術または流派にも適応しようとすることには注意が必要だと思います。

現代の社会では先に述べた場所(地域)を超えるのが一昔前よりかなり容易くなっており異文化(他の武術)との交わりも行われているからです。

個人の文化(武道武術)が自分の中に文化化すればするほど自文化中心主義となりやすいという事は経験の長い人ほど自覚しておかなければなりません。
ところが時に自分の武術(文化)こそが素晴らしい。と考えてその尺度で周りの武道武術(文化)を良し悪しで判断しようとする方々がいます。

私は自分の学ぶ武術を尊ぶ様に他の武道武術に対しても同様に尊重すべきだと考えています。

では他の武道武術と自分の学ぶ武道を「比較」してもいけないのか
というと、そうではありません。
他の武道を自分の(太極拳の)物差しで推しはかる(良し悪しの判断ではない)のは問題とはなりません。なぜなら太極拳を学ぶ者にとっての基準は太極拳しか無いからです。
自分に無いもので推しはかる事など出来ようはずがありません。

私がここで述べたいのは太極拳を学ぶ者が太極拳は素晴らしい。と思う様に他の武道武術を学ぶ者もまた自分達の武道武術は素晴らしいという尺度を持っている事を理解する必要がある。と言うとです。

文化は多数存在します。その複数性と平等性は認められるものでなければなりません。これは文化相対主義の考え方ですね。

文化相対主義の重要性を説いた上で更に私が懸念するのは、
「そうだね。武道武術は色々あるよね。皆違って皆良いだね。」
とお互いを尊重する事を建前として、お互いの理解を深めるという事自体をやめてしまう方々が出てくる事です。

お前はお前でやってくれ。俺は俺でやるから。ではお互いの理解は深まりません。
異文化(武道武術)を尊重している様で批判を恐れて口にしない。関わらない。という姿勢は文化(武道)の分断を招くと共に衰退に繋がると考えています。

文化(武道武術)の担い手が人である以上人には文化(武道武術)を超えて人類としてそこにある普遍的な共通の核となるものが有るはずです。

人は分かり合える。時間はかかっても、相互理解を諦めてはならないのです。
これからの社会の中で武道武術という文化が生き残る為に相互理解を深め、さらにその文化を深く確固たるものにして行く事が必要となっていくのではないでしょうか。
時に普段の練習の際会場ですれ違う異文化(武道武術)の方々とも互いに尊重と尊敬の念を持って接したい。と思っています。

「双月会」は新会員募集中です。
ちょっと太極拳に興味がある方。是非一緒に始めてみませんか?
「双月会」の会員は皆であなたの来場をお待ちしています。

「双月会」竹之内

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