陳氏太極拳協会双月会

★〜太極拳を通して考える。筋肉と重力。そして摩擦〜

2026年10月寄稿文

「双月会」で練習していると会話の中で色々と深掘りしたくなる内容に気づく事があります。
以前練習の中で筋肉の螺旋について話題にしました。
その時は確か筋肉には螺旋の流れがあり、それは衝撃を分散する為である。みたいなお話をしたと思います。

後々、ちょっと簡単な説明すぎたかな。と思うところがあり今回は筋肉と重力、そして摩擦についても、深掘りしてみようかと考えました。

重力は、私たちの身体を常に地球の中心方向へ引っ張っているものですが当たり前過ぎてその存在を感じる。または考える。という事はそうそうありません。

しかし、重力は存在していますし、私達の身体に影響を与えています。

昔宇宙飛行士の金井宣茂(かない・のりしげ)さんが、2018年宇宙から帰還した時の映像は自力で立つ事も出来ない状態でした。
後にご本人が立つ事も出来ず平衡感覚もおかしくなり眩暈もあった。とお話されています。
(こんなに人間の身体に重力が影響を与えているのだ)
と驚いた事でした。

重力の中で「立つ」という事は
頭・背骨・骨盤・脚 → 足 → 地面

という形で、身体の重さが地面に伝わります。
身体がリラックスした状態であるなら地球の中心の向かって垂直に身体の重さを伝える事になりますが、人は無意識や生活習慣、筋肉の癖などによってこの垂直に真っ直ぐ立つ。という事がなかなか難しくなるのです。

太極拳ではこの身体がリラックスした状態でスッと立つという事が
★虚領頂勁きょりょうちょうけい
★立身中正りっしんちゅうせい
などといった句訣に表されています。

筋肉の重要な役割は、「力を出す」ことだけではありません。

★骨格を適切な位置に保つこと。
★重力によって生じる動きを調整する役割
も果たしています。

これらの大切な筋肉の役割は生活習慣や癖などによって乱れ、時にはその影響が痛みとなって身体に現れる事があります。

筋肉をあまり使わないと言われる太極拳であっても筋肉の役割は大きい事にお気づきの方もおられることでしょう。

太極拳の動きは常に自分の軸や身体のコントロールを意識しています。
ゆっくりとした動きは「動く禅」とも言われ自分の身体を俯瞰で観察することによって「痛み」の前の「未病」の段階で自分の身体の異変に気づき、自身で調整を心掛ける事ができます。

次に筋肉と摩擦についても触れておきましょう。

摩擦は、簡単にいうと物体が接触面ですべるのを妨げる力です。
人間の場合、特に重要なのが足と地面の摩擦です。(ここでは推手の相手との接点についてはあえて触れません)

歩くときは
筋肉 → 骨格を動かす → 足が地面を押す → 摩擦 → 身体が前へ進む
という関係です。

摩擦の大きさは、一般的には

摩擦力 ≒ 摩擦係数 × 垂直抗力

で考えられます。

そして立っている人の場合、垂直抗力は大まかに言えば身体の重さ、つまり重力と関係します。

ですから、

重力 ↓
身体が地面を押す ↓
地面からの反作用(垂直抗力) ↑
足と地面の間で利用できる摩擦 ↑

という繋がりがあります。

つまり太極拳においては、この「重力」「摩擦」を「人間の身体」を通してコントロールする事が重要となってくるのです。
(意識や心はまたべつのお話としてありますが。)

太極拳の「力を抜く」というのは、筋肉を全部休ませることではありません。

余分な筋力を抜きながら、重力と地面からの反作用を自分の中に取り込む身体の動かし方の様にも感じます。

太極拳をする時足の裏を感じなさい(踏実)というお話があります。コレは

重力
↓
身体の重さが足へ伝わる
↓
足が地面を押す
↓
地面から反作用を受ける
↓
骨格を通して身体が動く
↓
筋肉がその動きを調整する

という一連の流れの事を指しているのではないでしょうか。

「力む」と何が起こるのかを考えてみましょう。

例えば腕を前に伸ばして、誰かに押してもらうとします。

全身をガチッと固めると、一見強そうですがからだが固まり力の伝達経路が固定され、重力や地面からの反作用を利用しにくくなります。

太極拳は適度に筋肉を緩め、骨格の位置を整える事によって「勁」の伝達を伝え易くしているのでしょう。

これが、太極拳でよく言われる「全身をつなげる」という感覚かと思います。

そして太極拳的に見ると、「筋肉で力を出す」のではなく、「重力と地面の力を、筋肉コントロールで骨格を繋ぎ「勁を入骨」させる事こそが、理想なのだろう。
(ああ、先は長いなぁ)
でも楽しみながら太極拳を学んでいきたい。
と思うのです。

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興味がある方は是非体験にいらしてください。
会員一同お待ちしております。

「双月会」竹之内

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