
2026年6月寄稿文
中国の仏教文化にみる蓮華と人物紹介
太極拳を学ぶ方々は中国の文化や歴史に触れる機会も多いと思います。
今回はその中でもよく目にする「蓮華」について
どういう意味があるのか
中国の思想や仏教とも深い関わりのあるこの花について述べてみたいと思います。
仏教では蓮の花と睡蓮の総称として「蓮華」という言葉が使われています。
紀元前の詩歌集『詩経(しきょう)』には既に蓮の花が出てきます。中国では蓮は紀元前から愛でられていた花なのですね。
最初に蓮と睡蓮の違いについて述べてみましょう。
蓮と睡蓮は、どちらも水の上に花を咲かせる植物です。
よく同じ植物と思っておられる方もいらっしゃいますが、実は異なるものです。
蓮の花は水面よりも高い位置に咲きます。その根っこにあるのが蓮根です。
一方睡蓮の花は水面に咲きます。モネの「睡蓮」に描かれているあの花です。
さて蓮華は、仏教において重要な象徴として古くから尊ばれて来ました。
蓮華は仏教では「尊い仏の悟り」を意味します。
仏像に興味がある方は御釈迦様が蓮華座の上に座っていたり立っていたりするのを思い出されるかもしれませんね。
「蓮華の五徳」という言葉を聞いた事はありませんか?
蓮華の五徳とは、仏教における人の在り方を説いた「5つの徳」の事です。
⑴汚泥不染(おでいふぜん)
蓮の泥の中にありながら清らかな姿をしている様子から苦境のなかでも清廉潔白な生き方をする事。
⑵一茎一花(いっけいいっか)
蓮の花は、一つの茎に対して一つの花しか咲かない事から唯一無二の自分自身を大切に生きる事。
⑶花果同時(かかどうじ)
蓮の花が開くと同時に、種(果)もできていると思われていた事から、人は誰しも生まれ出たと同時に「仏心」を身に付けていてそれを大事に育てる事が大切だという教え。
⑷一花多果(いっかたか)
蓮の花からは、多くの種(果)が実ることから一人の悟りが多くの者を幸せに導けるという教え。
⑸中虚外直(ちゅうこげちょく)
蓮の茎は中が空洞で固くまっすぐに伸びていることから自我や欲を無にして、悟りに向かう努力。
こうした仏教的な教えは中国のみならず日本にも広く普及しています。
それとは別に中国の思想家にも蓮華の花は大変愛されました。
その様子が
「周茂叔愛蓮図」
として描かれています。
柳の枝をゆらして一陣の風が吹き抜ける一瞬を切り取った開放的で清々しい風景の画です。
広がる水辺に浮かぶ蓮。そこをゆるりゆるりと漕ぎいでる小舟の上に学者風の人物(周茂叔)と舟の漕ぎ手が描かれています。
これは周茂叔が蓮の花を愛でる有名なワンシーンを切り取ったものです。
この掛軸は狩野派の初代・正信による唯一の国宝であり、室町時代に京都で隆盛した東山文化の水墨画を代表作であり国宝でもあります。(実は2026年6月現在九州国立博物館の4階にて見る事が出来ます)
この絵の中に描かれた「周茂淑」は太極拳をしている方にはちょっと知っておいて頂きたい人物なのです。
周茂淑((しゅうもしゅく)1017-1073)は、北宋の時代の人物です。
周敦颐(しゅう とんい)とも呼ばれ、別号を周濂渓(しゅうれんけい)ともいいました。
北宋の著名な思想家、儒学者、哲学者てあり文学者であり、中国理学の開祖としても知られ中国の思想文化に大きな影響を与えました。
周茂叔は生前は社会的には地位や名声からは遠く、慎ましい生活の中、己の私財を貧しい人々に分け与えるような人物でした。
彼が蓮の花を愛でたのも、泥の中に根を張りながら汚れのない花を咲かせ、清らかな香りや高くまっすぐに伸びる茎が崇高である様を、人生の生き方と捉えたのでしょう。
この周茂叔は後に「太極圖説」を著し、それは後の朱子学に大きな影響を与えます。
こうした仏教や中国の思想は日本の画家や教育にも大きな影響を与えました。
江戸時代、儒教、朱子学が日本という国の教育の根幹となっていたのはみなさんの知るところです。
周茂叔の「太極圖説」と聞いて、陳氏太極拳を学ぶ「双月会」の皆さんは沛山老師の「陳氏太極拳圖説」がすぐ頭に浮かぶかもしれません。
沛山老師の著書はもちろん太極拳の本。
周茂叔の「太極圖説」は陰陽太極の思想について書かれたものです。
けれど太極拳が陰陽からなる。と唱えている所からもその文化的背景、思想が大きく関わっている事がわかります。
太極拳を形のみで学ぶのでは無くその文化的背景思想はなんだったのか興味を持つのも楽しいかもしれません。
そんな訳で今回は蓮華の花の文化的宗教的考えと太極思想からの「周茂叔」のご紹介でした。
「双月会」では楽しく太極拳を学ぶ会です。
現在も会員募集中です。
興味のある方はぜひホームページ練習会場をご確認の上体験にお越しください。
会員一同お待ちしております。
楽しく健康に。
次回は8月(7月末に更新予定です。)
「双月会」竹之内